motosuke-takedaの日記

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私

5 修復腎移植についての国際的評価等

5 修復腎移植についての国際的評価等
(甲C20(P9~10),甲C21(P8~45),甲C24、甲C2)
 米フロリダ大学の藤田准教授は、「米国移植学会議」で予定(中止)された万波発表に用いられていた42症例のデータを用いて,独エッセンで開催された「国際生体臓器移植シンポジウム」(2007年6月11~12日)で演題発表を行なった。会場からは賛否両論の反応があったが,概ね死体腎臓の少ないアジア諸国からは賛成や強い興味を示された。西洋諸国は,もう少し用心深い対応で,症例がまだ少ないので,なんともいえないという反応もあったが,可能性を言下に否定するようなコメントはなかった。将来的には可能性を探ってみたいといったところであった。藤田准教授に対しては,主催者のBroelsch博士から,「素晴らしい発表だった」と個人的なコメントがあり,また,有名な移植外科医のS.T.Fan博士からも個人的に肯定的なコメントがあった。

 仏パリで開催された「国際泌尿器科学会議(2007年9月)でも藤田准教授が,42例の修復腎移植は死体腎移植と比較して有効であると発表したが,その発表は,各国から採用された16演題の1つとしてポスターと口頭により行われたが,演題発表に際しては,座長から,「今回発表される演題の中で最も興味のあるテーマであろう」と紹介されるほど注目度が高かった。

 米シカゴで開催された「トランスプラントサミット2007」(9月23~25日)でも藤田准教授が,修復腎移植42例中の悪性腫瘍の16例に絞ってポスター発表を行なった。「がんの部分切除をした後の腎臓の容積で,術後の腎機能は十分なのか」等の熱心な質問を受けた他,移植の分野で有名な米ハーバード・メディカルスクールのフランシス・デルモニコ教授や,米ラッシュ大学のステファン・ジェンシック准教授等から,「ドナーとレシピエントの双方が納得しているのならば,問題ないと思う」と話された。またサミットの主催者の1人は,6月の米国移植学会議で予定されていた万波医師の発表が日本移植学会からの横槍で取り止めになったことを知っており,「興味深い方法であり,腎臓がんの生物学的特性を知らない移植外科医を教育する為,早く論文にするように」勧めた。

 2008年1月25~27日に米フロリダ州のマルコ島で開催された「米国移植外科学会冬季シンポジウム」で,万波医師らの修復腎移植に関する論文が演題トップ10に選出されると共に発表された。万波医師は,賞金1000ドルを授与され,滞在費が免除される招待講演の栄誉にも輝いた。米国移植外科学会のゴーラン・クリマトム会長は,万波医師らが行なった修復腎移植について,「新しい方向性を示しており,大変興味深く大きな前進だと思いました。アメリカでは腎移植の待機期間が1~5年と比較的短いですが,ドナーが不足している国や地域では,認知されて広まり定着するのではないでしょうか。更なる追跡調査は必要ですが,移植を待つ患者さんにとって一般的な選択肢の一つとなる可能性は大きく,ドナー不足の解消にも繋がっていくのではないでしょうか」と語った。

 2007年春に東京・大阪で開催された「第1回国際腎不全シンポジウム」で講演した米国臓器配分ネットワークのティモシー・プルート会長は,「アメリカでもドナーが不足しているため,昔ならリスクがあるために敬遠されていたドナーの臓器でも,安全性に配慮しながら移植するケースが増えています。病気が転移しないことを前提として,修復腎移植を高く評価して支持しています。アメリカでは,ここ数年,政府が主導して,社会全体にさまざまな方法で臓器移植を増やしていこうとの気運が高まっています。修復腎移植はその流れにかなって,革新的で新しい方向性を示しているとして評価されたのではないでしょうか。何事も変化をもたらすことは難しく,大変な挑戦だと思います。」とコメントした。

 移植関係で最も権威のある医学雑誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・トランスプランテーション」にも修復腎移植42例の論文が掲載され,革新的治療として評価されるに至り,修復腎移植の国際的認知度はさらに高まった。

 2008年8月10~14日,豪シドニーで国際移植学会主催の「第22回国際移植学会議」が開催され,藤田准教授が,世界における過去の修復腎移植例を文献から収集し,その歴史やこれからの可能性について口頭で発表し,また,万波医師が小径腎がんの修復腎移植症例を日豪の合計症例として(甲C21(P26)),藤田保健衛生大学の堤教授が日本で修復腎移植が実施された場合に予測される手術可能性(甲C2)について、それぞれポスター発表した。また、現地豪クィーンズランド大学のデイヴィッド・ニコル教授が,自らの55例を発表し,注目を浴びた。
ア 藤田准教授の発表内容(甲C21(P12~15))
い 研究対象には,生体ドナーまたは死体ドナーで偶発的に見出された様々な疾患例も含まれており,分かっているものだけで,これまで世界で199症例が認められ,その内21症例が良性腫瘍,112症例が良性疾患,8症例が尿管がん,58症例が腎細胞がんだった。
ろ オーストラリア等で積極的に行なわれている小さな腎細胞がんの修復腎移植については結果が良好で,がんの転移はない。また5年間の患者の生存率や移植臓器の生着率は,通常の生体ドナーあるいは死体ドナーと比較すると若干劣る。しかし,オーストラリアの症例ではレシピエントの年齢が比較的高く,日本でもドナーのほぼ半数が70歳以上と極めて高齢であるためで,ドナーの年齢を通常の移植に合わせて修正した場合,生体ドナー及び死体ドナーと概ね同等になる。
は 死体ドナーの症例の大部分では,潜在がんを評価する為の超音波,CTスキャン,腫瘍マーカー検査は実施されない。最近では,より多くの高齢ドナーを受け入れるようになってきているので,悪性腫瘍の病歴のないドナーの臓器にも潜在がんの可能性は高いといえる。これと比較して,修復腎移植の場合には,ドナー評価が詳細に行なわれる。腫瘍があることを私達は承知しているが,同時にその他の部位には腫瘍がないことも私達には分かっている。
に 悪性腫瘍の伝播のリスクの推定は可能であり,部分切除患者ではおそらく5%までである。これは実際には待機リスト状態で死亡するよりも低い数値である。これらのことを顧みれば,修復腎移植は,健康な生体ドナーから入手した腎臓の使用よりも倫理的に妥当だと思われる。
イ ニコル教授の発表内容
い 他の疾患に関する画像診断で腎細胞がんが発見されるケースが非常に増加している。また,腎臓の切除が行われる最も一般的な理由は腎がんである。治療として,開腹での根治的腎摘出術(全摘出),腹腔鏡下根治的腎摘出術,部分腎摘出術(部分切除)の3つの選択肢があるが,これらは,個々の患者や泌尿器科医の判断により,どれも広く用いられている。部分切除は一般に望ましいとされるが,実際には広く行なわれているわけではない。米国の最近のデータを見ても,2~4cmの腫瘍では僅か10%に過ぎない。クリーブランド・クリニックのような大規模施設の報告から見積もっても,過去10年でさほど変化していない。
ろ 移植の待機リスト中にいる60歳以上の透析患者の年間予想死亡率はおよそ20%で,オーストラリアでは,死体ドナーからの移植の待機期間は4~5年の為,修復腎移植を受けることが出来ない場合,多くの患者の命が失われる現実がある。
は 今年の5月までに55例の修復腎移植を行い,殆どの移植腎は機能し続けている。そして,修復腎移植の件数は増加しており,昨年行なった生体ドナーからの移植のうち,全体の20%を占め,非常に重要な臓器提供源となりつつある。

 ニコル教授が行なった修復腎移植43例に関する論文は,BJUI(British Journal of Urology International)に掲載された(甲C21(P20~23))。